未承認国家、沿ドニエストル共和国へバスで行く
その名の通り、モルドバの東に位置するドニエストルという名前の川に沿って縦長に広がる「未承認国家」
国際的には「国」と認められていないので、モルドバの一部ということになっている。
だが独自の通貨はある。
首都はティラスポリ。
知っていることはそれだけだ。
昨日セントラルバスターミナルを歩いていたときに、「ティラスポォォォォォォォリ‼」となんども声を張り上げている太ったおじさんがいたので、乗り場は確認済みだ。
果たしてティラスポリおじさんは今日もいた。小さな窓口でチケットを買い、ミニバスに乗り込む。
チケットは片道ひとり36レイ(202円)
けっこう乗客がいるが、みんなどんな用事で行くのだろうか。仕事でもあるのか。
外国人は私たちふたりだけだ。
バスは、すこし走るとすぐに町を出る。あとはひたすら雪の野山が見えるだけの道だ。
退屈な景色に飽きてきたころ、ついに国境に着いた。外国人の私たちだけがバスを降ろされ、入国審査を受ける。私たちが日帰りである、ということだけ確認すると、ぺらぺらの滞在許可証のような紙を一枚わたされた。パスポートにスタンプは押されないのが残念だ。
ティラスポリの街を散策
そしてまたひたすら雪のなかを走り続け、ようやく終点のティラスポリ駅に到着。
駅で最小限のモルドバレイをドニエストルルーブルに両替する。なんせ未承認国家なので、お金を余らせてもほかの国では両替してもらえない。
駅舎の外観は立派だが、中に入るとがらんとしている。
そして駅前には何もない。首都の駅前の景色とは思えない。
私の実家(鳥取)の最寄り駅の方がまだましなくらい何もない。そして寒い。鳥取より寒い。(この日の最低気温は-9℃)
だが私たちはゆかねばならない!観光に…!
自分を奮い立たせなければいけないほど寒い。
とは言え特に行きたいところもない。散歩ぐらいしかすることもない。曇天の下、なんとなく栄えていそうな気がする方へほてほてと歩いてゆく。道を歩いている人があまりいない。
やっとお店が並ぶ通りに出たものの、やはり人通りは少ない。モルドバの首都キシナウよりはさみしい感じの町なみだ。
そしてこれはキシナウもそうなのだが、こんなふうに外の景色がガラスに反射して中が見えず、やってんだかやってないんだかわからないお店がほんとに多い。商売っ気がまるで感じられない。
とりあえず、国名にもなっているドニエストル川に行ってみる。ああ、これが夏だったなら……。
ドニエストル川のほとりで凍える青だるま。このあと凍った路面で滑ってこけることになる。
ほかにもレーニン像や戦車、市庁舎など一応「観光名所」とされているところはひととおり見たが、一番記憶に残っているのは、学校帰りの子どもたちだ。
夕方、リュックをしょって楽し気に話をしながら歩く4人の男の子たち。
学校から解放され、家路に着く途中の彼らを見てなぜか「自由」という言葉があたまに浮かんだ。
そこそこのお金があって好きな場所に行けて好きなものが食べられる大人が持っていない種類の自由。期間限定の自由。
30代も半ばの私としては遠い目になるほかない。
ここにも学校に通う小さな子どもたちがいて、その家族がいて、暮らしがある。そんな当たり前のことを自分の目で確認すること、ここにも人の営みがあるのだなぁ…としみじみすることが、私の旅行の主な目的であるような気がする。
そして、ばばあになればなるほどしみじみ成分は増している。
なんだか写真が全体的に暗いので、明るいごはんの写真も最後に。
スープにヨーグルトを入れるっていうのは、ロシア料理の文化ですかね?わりと好きです。
特にどうということもなかった、ただただのどかな未承認国家であった。
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