デンモクもない通信カラオケもなかった時代のカラオケ術

スナック
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デンモクのこと。

デンモクとは、「電子目次本」の略。

みなさんごぞんじ、タッチパネルで曲の検索と予約ができるこいつです。

 

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こいつが出てくるまではそーいえば、ぶあつい歌本をめくっていちいち番号入れてましたよね。遠い昔のことのような気がしますが。

調べてみるとこのデンモクというやつは、2002年に第一興商が発売して、その年にグッドデザイン賞を受賞しているらしいです。へぇ。

 

最近はこのデンモクのアプリなんてものもあるみたいで。

アプリをダウンロードすると、自分のスマホから直接曲の検索・予約ができたり、自分が歌った曲や採点の履歴が見れたりするそうです。

 

うーん。

もしスナックなんかでお客さんがこのアプリを使って好き勝手に歌を入れ始めたりしたら、混乱を招くというかかなりおかしなことになりそうですけどもね……。

そもそも必要性がちょっとよくわからないアプリです。

 

とはいえデンモクが発売されてから15年。ずいぶん便利になったもんです。 

77歳のじーちゃんのカラオケ術

このあいだ、御年77歳だというお客さまがご来店されました。

その方がさぁそろそろ歌を入れようかというとき、デンモクではなく、内ポケットに入れた手帳からなにやら小さく折りたたまれた紙を取り出して見ています。

 

??

と思い聞いてみると、紙を見せてくれました。

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小さな紙にはびっしりと曲名が。

じーちゃんの持ち歌です。ところどころデュエットもまじってます。

 

「うわー!すごいですねこれ!」とわたしが驚いて言うと、今度は隣に座っていた御年アラウンド60と思われる方がまじめな顔で、

「いや、むかしはみんなこういうの持ってたんだよ。もしくはお店側がお客さんのファイルをつくってて、誰がどの曲を歌うとか、キーの設定とか全部メモしてたの」

 

えっ!まじっすか!

それが何十年前の話かは聞くのを忘れてしまいましたが、デンモクどころか通信カラオケでもない、カラオケテープをがしゃこんと入れてた頃のお話ではないかと思われます。

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こういうファミコンのカセットみたいなのをデッキに入れてた時代。

 

お店の棚にはこのカセットとともに、常連客のカラオケデータがつまったファイルが並んでたってことなんですかね。

そうなると、お店と客の結びつきみたいなものは今よりもっと強かったのかなあとも思います。それはそれでおもしろいようなめんどくさいような。

 

どうやらじーちゃんのカラオケは、毎度この小さな紙を取り出して選曲し、お店のスタッフに曲を入れてもらう、という方式のようです。

そだよね、デンモクとか使い方よくわかんないよね。

 

そして大好きなのが「採点」

これがまた滅法うまく、難しそうな演歌でも、90点台をかるくたたき出してご満悦です。

恐れ入りました。

じゃあ次はデュエットいこうかということで、紙に書かれている曲のなかでわたしがかろうじて知っていた『今夜は離さない』を一緒に歌ってハイタッチ。

 

すると今度は、次回までにデュエット『渡し舟』を覚えといて、とのリクエストです。

了解。じゃあじーちゃんは『もしかしてPart Ⅱ』覚えといてね!とさっきの紙の一番下に手書きで曲名を書き加えました。

 

年齢も立場も何もかも違う人と、こういうコミュニケーションができるところがスナックのよいところよのう……と思いつつ、運転手が迎えに来たから、と帰っていくじーちゃんの背中を見送ったのでした。

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 『渡し舟』追加しておきます。

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