好きに生きればいいよね
先日、友人につれられて4人でいわゆるオカマバーに飲みに行った。
そこはスタッフがオカマと女性と両方いて、どちらについてほしいのか客が選ぶというお店で、わたしたちのところについてくれたのは、すでに性転換手術をすませた元男性のMちゃんというよくしゃべるきれいなお姉さんだった。
性転換手術は日本じゃほとんどやってないから、症例が少ないし手術代も高いのよ~。
だからだいたいみんな手術代も安くて症例もたくさんあるタイでやんのよ、わたしもタイでやったのよ~。
とっちゃうと男性ホルモンがゼロになっちゃうからさ~、ま~いにちホルモン投与しなきゃなんないから大変よぉ~~。
え?わたし?濡れるわよ~ちゃんと~。
ジョブレインボーっていうLGBTの人を対象にした就活サイトがあるのよ知ってる?
あなたもわたしたちみたいなのの採用考えてるならそのサイト見てみてよ~!
とにかくこちらが黙っていても早口でわーっとしゃべり続けるタイプの人で、パワフルだけど接客は上手とは言えない、でもなんだか憎めない人だった。
もうひとりいたスタッフは、見た目はもろに男性が女装しています!といった感じで、服装もメイクもどぎつい。聞けば昼間は某有名企業で働いているサラリーマンとのこと。
「明日は大阪に出張なのよ」
こういうところに来るとほんとうに、「みんな好きに生きればいいんだよな」と素直に思う。
今回もそう思いながらお店をあとにした。
とはいえ「好きに生きる」のもつらく苦しい
お店を出たあと、友人のひとりが「今度俺の知り合いが日本で性転換手術受けるんだよ」と言った。
その知り合いは、一年間病院に通ってカウンセリングを受け、ようやく手術をすることが決まったらしい。男性から女性になるための手術だ。
「性転換手術をした人の自殺率ってものすごい高いんだって」
彼から聞くまで、わたしは全くそんなことは知らなかったので衝撃だった。特に、カウンセリングをちゃんと受けずに手術した人の自殺率が高いのだそうだ。
確かにこんな話はさっきのお店ではできない。
家に帰ってからググってみると、
手術の結果、重篤な術後の体調不良が訪れることがあり、中には、とても疲れやすくなったり、術前に分泌されていたホルモンがなくなる結果、更年期障害が発生したり、それまでの仕事を続けられなくなる者もいる。中には後悔のあまり自殺する者も存在し、タイでこうした手術のアテンドを助ける渡邉アツミは、「ネット上にはSRS体験者の喜びの声が溢れていますが、その後の健康、人生、人間関係がどう変わるかが抜け落ちています。」
(Wikipediaより引用)
身体の性別を変えたいと願った人が、実際にその願いをかなえてめでたしめでたし。
と、そう単純にはいかない……。
性転換したことを後悔するあまりに自殺する人がいる、ということに一番驚いた。
しかし手術をするということは、腸閉塞や排尿障害などの重い後遺症、生殖機能を永遠に失ってしまうということ、人間関係の変化、ホルモンバランスが崩れることによる抑うつ状態……
なりたい身体を手に入れた、ということ以上に、手術をしたことによってうまれる問題もたくさんあるのだ。
LGBTの人たちに対するわたしの想像が、あまりにも単純かつ貧しいものだったということを思い知った。
明るく笑って話していたさっきのお姉さんが、また違った色あいをおびて思い出される。
「好きに生きる」のも、ときにはつらく苦しいものだよな。
「あるがままの心で生きようと願うから人はまた傷ついてゆく」とは、ミスチルの『名もなき詩』の歌詞だけど、この曲はほんと名曲だよなぁ。
と、思い出したのだった。
コメント