「東アジアで最も美しい」と言われるモスクが、代々木上原にあります。
- イスラム教徒じゃなくても誰でも、基本的には10:00~18:00まで、平日・週末ともに見学OK
- 一般の見学も、日本語ガイドツアーも予約不要・入場無料
わたしたち日本人にとってはイスラム教というとあまりなじみがないし、「よくわかんないけど行っていいのかな……」と思うかもしれませんが、神社やお寺と同じように誰にでも開かれていて、ふらりと立ち寄れる施設です。
わたしも、このモスクの存在を知ってからずっと気になっていたので、ふと思い立って行ってみることにしました。
スタッフの方が温かく出迎えてくれるので、基本的な注意事項(服装や撮影についてなど)をおさえておけば、あとは何も心配することはありません。
わたしは週末の「日本語ガイドツアー」と、後日、礼拝が行われるという金曜日に一般の見学で行ってみました。
ということで当記事では、
- 東京ジャーミイ日本語ガイドツアー(所要時間1時間前後)の様子
- 礼拝が行われる金曜日の東京ジャーミイの様子
- 東京ジャーミイ内のハラールマーケットの様子
- 東京ジャーミイを見学するときの注意点(服装、撮影)
についてまとめました。
これから東京ジャーミイの見学に行ってみたいと思っている人は参考にしてみてください。
日本最大のモスク「東京ジャーミイ」はなぜ代々木上原にできた?
東京・小田急線代々木上原駅から徒歩5分ほどのところにある「東京ジャーミイ」
オスマン・トルコ様式による日本最大のモスク(イスラム教の礼拝堂)です。
「ジャーミイ」とはトルコ語で、金曜礼拝を含む1日5回の礼拝が行われる大規模なモスクのことで、「人の集まる場所」を意味するアラビア語が語源だそうです。
ここ代々木上原に最初にモスクができたのは、1938年。
1917年のロシア革命のときに、ロシア帝国にいたイスラム教徒やトルコ民族の多くが国外に避難し、日本には約600人が移住してきました。
そしてそのうちの200人は東京へ。
特に渋谷区に多く住んだようです。
そして彼らのために、日本人有志たちからの寄付が集まり、初代モスクが建てられました。
ですが初代モスクは木造建築で、老朽化により1984年に閉鎖。
そして今度はトルコ国内で寄付を募り、今のモスクが完成したのが2000年。
モスク建築のため、トルコからも多くの職人が来たということです。
そんな歴史のあるモスクの入り口の扉の上部分には、アラビア語と日本語が。
アラビア語では、「神の家へようこそ」と書いてあります。
わたしたちは14時過ぎにモスクへ到着。
美しい入り口の扉が、来る人を受け入れるように半分開け放たれていました。
扉の美しい装飾を見ながら、1階ホールへと入っていきます。
特に受付などをする必要はありません。
男女とも、露出は少ない格好で。
女性が頭にスカーフを巻かなければいけないのは2階の礼拝堂に入るときだけで、それ以外は巻かなくても大丈夫です。
日本語ガイドツアーは、予想していたよりも参加者が多いことに驚きました。
50人くらいはいたと思います。
イスラム文化に興味がある人ってけっこういるんですね~。
イスラム関連書籍がそろう本屋さんとイベントもチェック
入り口を入ってすぐ右手側は、書店スペースとなっています。
イスラム教の聖典コーランから絵本や料理本まで、イスラム関連の書籍が幅広くそろえられています。
持ち歩きに適した、こんなかわいいコーランまであるんですね。
わたしのように、イスラムに興味はあるけどどんな本を買ったらいいかよくわからない……
という人には、入り口を入って左側(書店スペースの向かい側)の棚の上に置いてある無料の冊子がおすすめです。
「イスラム教徒の女性はなぜ頭部を覆わなければいけないの?」
「イスラームは怖い、テロといったイメージがあります。イスラームという宗教はテロを容認しているのでしょうか?」
などなど、イスラムについての基本的な疑問が質疑応答の形式で書かれていて、気になったところから読むこともできます。
イスラム入門やトルコ語入門、チャリティーバザールなど、随時いろんなイベントもやっているようなので、もっとイスラムのことを知りたい、と思ったら要チェックです。
書店の隣にある多目的ホールでは、イスラム教徒の方たちがお茶をしていました。
ラマダン(断食月)のときは、ここでみんなで夕食をとるそうです。
しかも、東京ジャーミイのホームページから予約すれば、イスラム教徒ではない人でも夕食会に参加できるとか。
行ってみたいー!
書店の向かい側は、こじんまりとした休憩スペースになっていました。
独特のタイルの模様や扉のデザインがきれいです。
などと、1階ホール部分をあちこち眺めているうちに時間になり、ガイドツアーがはじまりました。
ガイドさんの情熱がすごい!日本語ガイドつき東京ジャーミイツアー
まずは外に出て、外観の説明から。
モスクとは、あらゆる人間や動物のためのシェルター(避難所)としての役割を持っているとのこと。
人生に迷った人、困った人はみな平等に受け入れて、導くための施設だということです。
そこに、貧富の差や人種などは関係ありません。
入り口に向かって左側にあるこの蛇口。
この蛇口も、人間と動物、両方のための水飲み場として設置されているそうです。
モスクは人間だけでなく動物にも開かれた場所なんですね。
そして上の部分にあるこの装飾、トルコを代表する3種類の花が施されているとのこですが……
それは、バラ、カーネーション、チューリップ。
花びらの先がひょろひょろと細くなっているのがチューリップだそうですが、あれがチューリップ???
それについてガイドの方がかなり力説しておられたのは、チューリップと言えばオランダと思っている人が多いけどあれはトルコの花だ!!
もともとトルコ原産だったチューリップがとても美しかったので、これは売れると考えたオランダ人が大量にトルコから球根を仕入れ、品種改良を重ねてうまれたのが現在の形のチューリップなんだとか。(そのときにチューリップバブルが起こった)
花びらの先が細くなっているのがチューリップのもともとの形ですが、野生のチューリップは今ではなかなか見られないそうです。
モスクの裏側にまわると、上の部分にふたつ、小屋みたいなのがくっついてます。
これは鳥が住めるようにとつくられたもので、こんなところにも人間と動物の共生というイスラム教の思想があらわれてるんですね。
そして今工事中の写真右側の建物は、トルコ文化センター。(2022年現在は工事は終了しています)
入り口はこちら側にもあります。
細い裏道に面した、トルコ文化センター側の入り口。
東京ジャーミイとトルコ文化センターは中でつながっています。
外観の説明が終わったら、ようやく2階の礼拝堂へ。
柱のストライプ模様がなんだか意外です。
モスクの壁にはいたるところにはカリグラフィーと言われる、アラビア語で書かれた絵のような文字が書かれていて、意味はわからないながらもきれいです。
ちなみにこれは、「できるだけ早く罪を悔い改めよ」という意味だそうです。
この美しい扉を開ければ礼拝堂。
入ってすぐ左手のところにスカーフが置いてあるので、女性でスカーフを持っていない人はここで借りられます。
でも数に限りがあるので、できれば持っていったほうがいいです。
わたしが行ったときは見学者の数が多くてスカーフが足りず、やむなくそのままモスクに入っている人もいました。
天井が高くひろびろとした空間で、ステンドグラスや独特の模様が美しい!
わたしが海外で見たことのあるモスクをいくつか思い出してみても、ここはかなり装飾的で豪華できれいなモスクだと感じました。
3階部分には女性専用の礼拝スペースがあります。
男女別になっている理由は、
礼拝するとき、正座をした状態から頭を床につけお尻を高く上げる格好になるので、男性の目の前に女性のお尻が来ると男性が集中できないから!
だそうです。笑
偉い人が上からお話をするところ。
窓のところには書見台にコーランが置いてあり、誰でも見られるようになっています。
コーランは神聖な本なので、床に直接置いてはいけないそうです。
「コーラン」とは、人生という長い旅のガイドブック、という説明はなんだかしっくりきました。
「無宗教」だという人は、ガイドブックも持たずに旅をしている人に見えるってことなんですかね?
扉、窓、階段、天井……どこを眺めても美しいです。
座ってガイドさんの話を聞いていると、若い男性がひとりやってきてマイクを取り、「アザーン」がはじまりました。
「アザーン」とは、礼拝への呼びかけです。
「神は偉大なり」という意味の「アッラーフ・アクバル」という言葉の4度の繰り返しからはじまります。
伸びのある澄んだきれいな声で、独特の節まわしで音楽のように繰り返されるアザーン。
その声にじっと聞き入っていると、東京が遠くなります。
そして礼拝がはじまり、祈りの声がドーム内に響きます。
(※礼拝中は撮影禁止)
礼拝が終わってからも、ガイドさんの話はまだまだ続きます。
この時点ですでに、1時間半は経過。
このガイドさん、イスラム文化を理解してほしいという情熱がバシバシ伝わってくる人で、話がとまりません。(笑)
ガイドツアーが終わったあとも、質問がある人はいくらでも聞きに来てください、ということで、1階でさらに深いお話を数人の方にされていました。
ツアーは、モスク見学と礼拝見学を含めて、だいたい1時間半くらい見ておくとじゅうぶんかと思います。
金曜礼拝が行われるときの東京ジャーミー見学の際の注意点
東京ジャーミイは平日も見学可能です。
ただ、毎週12:45分から礼拝が行われるという金曜日は、一般の人の見学は14:00以降からなので注意が必要。
ちょうどこれから礼拝が始まる、という時間に行ってみると、たくさんのイスラム教徒の人たちが2階の礼拝堂へと上がっていくところでした。
金曜日の東京ジャーミイ見学の注意点を以下にまとめます。
- 金曜日の礼拝中は1階部分(書店・ハラールマーケット)はクローズ
- 礼拝堂の見学をしたい人は、正面入り口横の外階段を上がって2階に上がって見学可能(礼拝中は中には入れない)
- 礼拝が終わったあとは、ハラールマーケットが激混み
金曜日は、礼拝が終わるまでは礼拝堂の中に入ることができないので注意です。
さらに、礼拝が終わったあとは信徒の人たちがハラールマーケットに殺到。
レジに並ぶ人の行列は店内の棚をぐるりと取り囲んでしまうほど長く、混雑が収まるまでにはけっこう時間がかかる……という状況でした。
ハラールマーケットもゆっくり見たい…という人は、金曜日以外の日に行った方がいいです。
スーパー「ハラールマーケット」が充実の品揃え。チーズケーキがおすすめ!
ガイドツアーが終わったあとは、ハラールマーケットをゆっくり見てみるとおもしろいです。
2019年5月にオープンした、コンビニくらいの広さがある「ハラールマーケット」
中で売られているのは、ハラール食品(イスラム法上で食べることが許されている食材や料理 )や、コーヒーカップ、歯ブラシ、スカーフなどの生活用品で、想像していた以上に品揃えが豊富です。
パン、お菓子、インスタント食品、ジュース、スパイス、チーズ………なんでもあります。
普通のコンビニと同じような充実の品揃えで、ひとつひとつ手にとって見ていると楽しい~。
ハラールのお肉は、冷凍だけでなく生肉も置いてありました。
トルコで飲まれているチャイ(紅茶)の茶葉や、トルココーヒー用の豆と器具。
わたしは店長オススメ!と書かれている茶葉を缶で買ってみました(780円)
そして、わたしのお目当てはというと、レジの横で売られているケーキ!
どれもきれいですごくおいしそう~!
日によって、ケーキの種類は若干違うそうです。
これらもすべてハラール食品で、 ゼラチンや乳化剤、ショートニングなど、イスラム教で禁止されている豚肉由来の成分をいっさい使わずに作っているんだとか。
しかもこれらのケーキはどれも300円以下!
すごすぎです。
ということで、スタッフにおすすめされたチーズケーキ、モンブラン、ホワイトチョコのラズベリームースの3つを買って、同じくハラールマーケットで買った紅茶と合わせていただきました。
店内には、カウンターの数席だけですがイートインスペースもあります。
ケーキのお味はと言うと、どれも軽い口当たりですごくちょうどいい甘さでおいしい!!
不思議とどれも本当に軽い感じで甘すぎないので、いくらでも食べられそうな気がしちゃいます。
その中でも、個人的に一番好きだったのはチーズケーキ。
しっかりとチーズの濃い味はしつつも重くなくさわやかで、売れ行きも一番いいみたいでした。
チーズケーキ、おすすめです!
その他、ハラールマーケット内には「店長オススメ!」と書かれている商品がいくつかあるので、「せっかくだから何か買って帰りたい」という人は、そのPOPを参考に探してみるといいと思います。
東京ジャーミイへのアクセス
住所:〒151-0065 東京都渋谷区大山町1-19
開館日:年中無休(土日祝日と年末年始も通常通り開館)
開館時間:10:00 ~ 18:00(金曜日の一般見学は14:00以降可能)
小田急小田原線・代々木上原駅 徒歩5分
地下鉄東京メトロ千代田線・代々木上原駅 徒歩5分
京王バス・大山町バス停 徒歩2分
東京ジャーミイの見学と日本語ガイドツアーに関するまとめ
イスラム教でなくても、誰でも毎日見学可能な東京ジャーミイの見学とガイドツアーについての注意点はこちら。
- 見学だけなら毎日、10:00~18:00まで見学可能
- ただし金曜日は礼拝があるので、集団礼拝に参加する信徒以外は14:00以降見学可能
- 個人・少人数の場合は予約不要
平日・週末・祝日、いつでも年中無休で見学できます。
思い立ったらふらっと行けちゃうのがいいですね。
そして、金曜日の見学の注意点はこちら。
- 金曜日は礼拝が終わるまで、1階部分の本屋・ハラールマーケットもクローズ
- 礼拝中は礼拝堂の中には入れないが、礼拝堂の外からなら見学できる
- 礼拝終了後はハラールマーケットが激混みする
特に礼拝がある日の様子を見てみたい、というのでなければ、混雑する金曜日は避けた方がいいかなと思います。
日本語ガイドツアーについての注意点はこちら。
- 毎週土日、祝日の14:30分から礼拝の様子も見られる日本語ガイドツアーを開催
- 祝日と金曜が重なった場合はツアーはお休み
- 所要時間は1時間前後くらい
- 団体でも予約不要
- 平日にガイドツアー希望の場合、5名以上の団体予約に限り公式サイトより受付
日本語ガイドツアーも一般見学と同じく、指定の時間にさえ行けば予約しなくても大丈夫。
気負わず参加できます。
東京ジャーミイ見学の際の注意点
イスラム教徒でなくても、年中無休でいつでもわたしたちを受け入れてくれる東京ジャーミイですが、見学の際にはいくつか注意点があります。
これらをおさえてから行きましょう。
- 撮影可能。ただし、他の来館者や信徒、礼拝中の人を被写体にするのは禁止
- 撮影した写真の販売は禁止
見学中に、礼拝に来た信徒の人を見かけることもあると思いますが、撮影は禁止されています。
- 女性はストールかスカーフ(色、柄、形は不問)持参
- 男女とも、身体の露出の少ない服装で。(女性は長袖・長ズボン、ロングスカート(足首まで隠れるもの)など、男性の場合もハーフパンツやタンクトップはダメ)
- 1階ホールでは女性のスカーフは不要、ただし服装は上記と同様の服装で。
男女とも、肌の露出の少ない服装が望ましいです。
夏場の暑い時期だからと言って、キャミソールやショートパンツ、なんて格好でいかないように注意しましょう。
1階ホールでは、女性はスカーフをしなくても大丈夫です。
- 礼拝場に入る前は靴を脱いで、私語をつつしむ
- 礼拝場での写真・動画撮影は、事前に許可をとる
- 礼拝中の撮影は禁止
- 礼拝中は後方に座り、うろうろしない
- 礼拝場の上階は女性のみ入場可
- ペット不可
美しい礼拝場の中に入ると、誰しも写真を撮りたくなると思います。
事前に一言スタッフの人に声をかけておきましょう。
最後に、イスラム教って興味はあるけどよくわかんないしなんか難しそう……って人におすすめの本を3冊紹介して終わりにしたいと思います。
日本人のサトコと、サウジアラビア人でイスラム教徒のナダがアメリカでルームシェアするお話。
4コマで二人の日常を描いています。
絵も二人のキャラクターもとにかくすっごくかわいくて、ナダを通して描かれるイスラム教徒の考え方などは新鮮で目からウロコ!なものもたくさん。
やっぱりマンガはとっつきやすくていいですね。
そしてわたしの好きな高野秀行さんの著書。
飲酒が禁じられているはずのイスラム文化圏で、密造酒や密輸酒など、とにかく酒!を求めてどこまでも行く著者の執念はすごい!
でも気持ちはわかります……。
この本に限らず、海外の文化に興味がある人は高野秀行さんの体当たりノンフィクションをどれか1冊でも読んでみたらハマるはず。
宗教に無関心な典型的日本人である著者が、イスラム教徒の男性との結婚生活を描いた漫画。
タイトルの「共存」という言葉がなんだかしっくりくるというか、自分とは違う人の考え方を受け入れたり受け入れられなかったりしながら、それでも仲良く「共存」する二人が面白いです。
コメント